独標から西穂に向かう最初の難所が独標からの下りだ。 積雪期では岩の間に雪が入り、足がかけづらかったり、ホールドがしづらかったりする。とはいえ、きちんとしたルートを通ればホールドもあるし、足をかける場所もあるのでそれほど難しくはない。 しかし、残念なことに伸二郎はルートをミスってしまった。行きも、帰りも。よく注意すれば目印が見えていたのだが、見落としてしまったのだ。 伸二郎が間違えたルートは青と赤。どちらも足をかけづらく、ホールドもしづらい。伸二郎はピッケルを2本雪や岩にひっかけて強引に通ったが、どちらも十分なかかり方ではなく、一歩間違えば滑落の危険もあった。 正解は黄色いルートでほぼ直線的に下る。岩には白ペンキで丸印がうってあるので、しっかり見て進むと良いだろう。 |
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独標から下ったあとトラバース気味に登っていくと、プチ独標かと思えるピークを超える。このピークからピラミッド方面へは傾斜の強い斜面。ダガーポジションで慎重に下った。 このピークの鞍部でピラミッドから帰ってきた登山者とすれ違う。すれ違う際に「ピラミッドから先に行こうとしたが、腰まで埋まるラッセルだったため、やめた」と聞かされる。 山荘でトレースがないと聞いた時から予想はついていたが、実際にトレースがないとわかるとやっぱりショックだ。今日、西穂まで行ける気がしなくなってきたな。 |
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それでも、今日は登れなかったとしても、明日また登りに来るので、明日の行程が楽になるように行けるところまでトレースをつけておこうと前進。 先行者がつけてくれたありがたーいトレースをたどり、ピラミッドの穂先へ向かう。この場所、傾斜はきついが、トレースさえあれば難しくはない。 |
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ピラミッドにたどり着くと、標識が半分くらい埋まっていた。正面には目指す西穂がまだまだ遠くに聳えている。うーん、やっぱきつそうだ。 | ||
ピラミッドからは先行者が言っていた通り、トレースがない。いや、正確に言うと、山ノ住人のかわいらしいトレースは残っている。ウサギかな?カモシカかな?こんな季節にこんな危険な稜線を歩いていくなんてすごいな。 ラッセル隊長となった伸二郎はかわいいトレースを頼りにラッセル開始。痩せた稜線でラッセルするのは初めてなので、どこを通ろうかちょっと迷ったが、崩れ無さそうなところをてきとーに選んで進んでった まー、たぶん大丈夫でしょ。 |
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ボフボフ埋まりながらも確実に進んでいくと、深雪地帯を越え、足が埋まらなくなった。ふー、今日のラッセルは区間が短くて良かったな。 その後、いくつか来るピークをなんとなく見える登山道跡を頼りに進んでいく。時折、わからないところは滑落し無さそうなところを適当に目星をつけ、進んでいく。 時々、間違えて引き返したりしながらも順調に進む。いつもトレースのある道ばかり通るので、ちょっと大変だが、自分で道を切り開いていくのはなんだか気持ちがいいもんだ。 |
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登りでちょっと疲れ、休憩がてらピラミッド方面を振り返った。ピラミッドからは小さなピークをいくつか越えていく(たいてい巻いていくが)。独標から見るとピークが少なく思えるが、実際には沢山あり、結構疲れる。 | ||
その後、何度か登頂をあきらめそうになるも、へこたれずに進み、ついに西穂が目の前に。残るはあの雪壁のみだ。 西穂直下の雪壁はどこ行こうか迷ったが、結局ほぼ直登ルートを取った(写真赤線)。ダブルピッケルのダガーポジションでガシガシと登っていく。傾斜は強いが、思いのほか楽だ。 雪の状態にもよるが、多少傾斜が強くてもアイゼン、ピッケルが確実に刺されば雪壁はそれほど難しくないと思う。 |
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雪壁を登ると、西穂頂上は目の前。 誰もいない頂上で一人ガッツポーズ。何週間も待ち続けたから喜びもひとしお。 心を映し出すかのような青空の下で達成感に浸った。頑張ったな俺。 |
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西穂高岳 2011年2月 |