飯を食って、パワー全開で外に出るが、辺りは一面の雲、雲、雲。オーノー、このままじゃ負けちまうぜ。なんとしても晴れてくれねば。いや、勝負なんか別として、休みを取って金を使ってここまで来たのに景色がなんも見えんのでは悔しすぎる。きっと晴れるに違いない。 気を取り直して出発する。雲はかかっているとはいえ、雲間から見える景色、雰囲気は素晴しい。晴れていればさぞ気持ちが良いことだろう。室堂はなかなか良いところだな。 綺麗に整備された石畳の道を進むが、グッチになんか道が違わないかと指摘される。そんなバカなと思いつつ、地図を見ると、バッチリ違ってた。いんやー、ちっとも気付かんかったよ。 てなわけで正しい道に向かい方向転換。途中、立山の写真に必ずと言っていいほど登場するミクリガ池を通りがかるが、池に映ったのは雲のみでちっとも綺麗でない。やっぱ、ミクリガ池は立山をバックに見んと引き立たんな。 |
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室堂はどんよりした雲によりイマイチな景色だった。それでも雲の切れ間から見える景色がかなりのもの。 | ミクリガ池。この方向から見るとぜんぜんきれいでない。立山をバックに見ましょう。 |
道は雷鳥平に向かい、クネクネ曲がりながら下っていく。別山乗越に行くまでずっと上りだと思っていたが、実は室堂はなかなか高い位置にあり、雷鳥平までは100m以上下る羽目になる。100m下る=100m余分に登りかえすわけで、宿命とは言え、辛い。 おまけにパラパラと雨が降ってきたと思ったら本降りの雨になった。こりゃもうやっとれんな。 |
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雷鳥沢と別算尾根を望む。雷鳥平は高層湿原かな。とても気分の良いところだ。 | |
カッパを着込み、雷鳥平に向かう。途中、火山地帯らしい地獄谷を横目に下りきると、平坦な雷鳥平到着。雷鳥平にはテン場があり、既にいくつかテントが張ってあった。水場こそ無いけれどロケーションはなかなかだ。 |
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地獄谷。全国の地獄谷同様に硫黄臭がたちこめる。温泉地帯なんだね。 | 雷鳥平のテン場。平坦で見晴らしが良く、なかなか良い所。 |
雷鳥平のテン場を過ぎると沢があり、沢にかかる橋を渡ると遊歩道は無くなり、ついに登山道開始。分かり辛い標識を地図を確認しながら進む。ここに限らずだが、剣岳に向かう登山道は実に分かり辛い。天気がよければあまり問題にならないかもしれないが、この日のようなガスがかかった日はかなり困る。改善して欲しいな。 沢沿いに下っていくとすぐに雷鳥沢(剣岳・剣御前小屋)方面への分岐があるので曲がる。最初傾斜は緩いが、徐々にきつくなり、たまらず休憩。テン泊荷物を背負った登山はさすがにキツイ。一方のグッチは相変わらず平気そうだ。若いって良いな。 |
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沢にかかるこの橋を渡るといよいよ登山道の始まり。 | 雷鳥沢の登りはながーく、キツイ。休憩を取りながら確実に。 |
小さな尾根をまたぐと道はさらに傾斜を増していく。つづら折れの道をひたすら登っていくが、きつくなり休憩。ふと辺りを見渡すと、グッチがあるものに気付く。「あれ、雷鳥ですかね?」。 はじめ伸二郎には見えなかったが、良く見ると確かにいる。それも1匹でなく、3匹、いや4匹か。気付けば先ほど通った登山道の近くだ。でも全然気付かなかったな。やっぱ保護色ってすごいな。 さらに進んでいくと、登山道のすぐ近くにもう1匹雷鳥を発見。ふっくらしたかわいらしい姿が雨ばかりで凹んでいた伸二郎の心に光を射してくれた。 結局、14時を回った時点で天気は雨。賭けは完全にグッチの勝利。伸二郎は完全なる敗北だ。でも雷鳥のおかげでちょっとこころは晴れ晴れだった。人間とはささいな事で気持ちが変わるもんだ。 降りしきる雨の中、なかなかのペースで上り、14時50分、剣御前小屋到着。カッパマン二人は雨宿りをして少し休んだ。 |
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強まる雨に気分が沈んでいたところに現れた雷鳥。いっぱつで気分上々。登山道のアイドルだな。かわいらしい。 | 別山乗越にある剣御前小屋。自慢のジャージ姿を見せられぬ雨男と。 |
剣御前小屋からは1時間ほどの下りで今日の宿泊地である剣沢小屋に到着できるはず。今日の登山は終わったも同然だ。良い気分で登山道を行く。登山道は緩やかに下り、楽チンだ。 順調にずんずん進んでいく。いやー、良いペースだ。景色は見えんけどねーなんて思っていたら、だんだんガスも晴れてきた。 「こりゃそのうち晴れるんじゃない。向こうの山も見えてきたし。おお、向こうにも登山道があるのか、人が見えるぞ。小屋もあるしテン場もあるし。。。ってなんでテン場があるんだ?」 |
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剣御前小屋以降は基本的に下り。楽だ。 | ガスの中から現れた景色に違和感を覚える。向こうに小屋とテン場があるような。。。 |
良く見るとさらに下にもテン場が見える。おかしい。あっちにはテン場は無いはず。もしや。。。さらにガスが晴れてきたとき、疑問は確信に変わった。確かに向こうにテン場が見える。あれは間違いなく剣沢小屋だ。そして俺は登山道を間違えている。 地図を見る。ルートを確かめると、どうやら剣山荘への道を間違って進んでいるようだ。もうかなり下ってきたから引き返すのも辛い。結局、剣山荘まで行き、そこから剣沢小屋に向かうことにした。やれやれ、これはかなりやっちまったな。 剣山荘への道は時折ゴロゴロした岩場があり、油断してると滑って転んでしまいそうだ。案外気が抜けんな。 ゴロゴロ地帯を過ぎてしばらく下ると正面に剣山荘が見えてきた。そしてガスの切れ間から目指す剣岳の姿も見えてきた。意外に近く、小さいな。晴れたらそれほど手強くないかも。。。 |
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ガスが晴れたとき、違和感は確信に変わった。間違いない。俺は道を間違えている。 | 剣山荘への道は一部岩がゴロゴロした部分がある。滑ってこけないよう注意が必要だ。 |
剣山荘とガスの中から現れた剣岳。結局、今回の登山で剣岳を拝めたのはこの日だけだった。 | |
剣山荘から剣沢小屋は30分位だった。案外時間のロスは少なく済んだな。でももう少しルートをしっかり見ておかんといかんかった。ちょっと反省。 小屋で賭けの勝者グッチにビールをプレゼントし、テン場横にある別の建物でテン場の受付を済ます。幕営料は一人一泊500円。まー妥当なとこだ。 受付を済ませ、テントを設営する。正面に剣岳が見えるバッチリな位置にテントを設営したが、ガスがより強くなってきた、せっかくの立地を生かせず。うーん、明日晴れるかな。 飯を食って一休み。グッチは今回、携帯ラジオを持参しており、天気予報を聞くことが出来た。それによると 「今日は全国的に天気が不安定でところどころで雷を伴った激しい雨が降っており、深夜まで続きそう。」 「明日は寒気を伴った弱い気圧の谷が通過し、昼前まで曇り、昼ぐらいから雷を伴った激しい雨の可能性有り。」 とのこと。最悪だ。単なる雨ならまだましだが、雷雨はやべぇ。今年は白馬でやられたばっかで恐怖感倍増だ。明日の剣は天気を見て撤退も有りだな。。。 |
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やっとこさ着いた剣沢小屋。まったりしたところ。 | 剣を正面に望むナイスな立地条件のテン場だったんだが、見えるのはガスのみ。無念。 |
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